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SES還元率の「見せかけ」を見抜く3つの質問【2026年版】
📌 この記事でわかること
- 「還元率80%」が実質65%になる3つのカラクリ
- 面接で使える「見抜き質問」3つと、答えを濁す会社が要注意な理由
- 単価60万〜100万×還元率50〜75%の手取り実額シミュレーション
- SES会社を変えただけで月収が20万→40万になった実体験と、その仕組み
「還元率80%です」——転職活動中、そのひと言に惹かれたことはないでしょうか。
でも実際に入ってみたら、手取りが思ったより全然少なかった。
そういう話を、私は何度も聞いてきました。
私自身、SES1社目で月収20〜25万円のまま約1年半をすごしました。
不満ながらも「SESってこんなものか」と思っていたんです。
ところが別のSES会社に転職したら、同じような案件ルートなのに月収が40万円になりました。
案件は変わっていない。スキルも急に伸びたわけではない。変わったのは所属するSES会社だけです。
そのとき初めて気づきました。SESエンジニアの手取りは「自分の市場価値」より「所属会社の取り分」で決まる、と。
この記事では、還元率の数字がどのように膨らまされているかを3つのカラクリで解説し、面接で実態を見抜くための質問と、手取りシミュレーション表をお届けします。
SES還元率とは何か——数字の定義が企業ごとにバラバラな理由
SES還元率とは、エンジニアの月単価に対して、実際に給与として支払われる割合を指す指標です。
「月単価80万円・還元率70%」であれば、受け取る月給は56万円——というのが教科書的な説明です。
問題は「計算式が統一されていない」点にあります。
厚生労働省「令和5年度 労働者派遣事業報告書」のデータによると、ITエンジニアへの派遣料金の還元率の業界平均は約61%です(出典: 厚生労働省 令和5年度労働者派遣事業報告書集計結果(速報))。
しかし「何を分母・分子にするか」が企業によってまったく異なるため、同じ実質待遇でも、数字の見せ方を変えるだけで還元率は10〜15ポイント高く見せられます。あなたが比較している「80%」と「65%」は、計算式の違いで逆転する可能性があります。

「見せかけ還元率」3つのカラクリ
転職市場で「還元率80%」を謳う企業は増えています。
ところが業界の実態として、還元率が72〜73%を超えると会社は赤字に近づきます(出典: エンジニアtype 還元率8割は大ウソ 2025年)。
それでも「80%」を名乗れる理由は、計算式に3つのカラクリがあるからです。
以下の3つのカラクリが組み合わさると、「還元率80%」の実質額面は「65%」前後になります。面接前に必ず確認してください。
カラクリ① 社会保険料の「会社負担分」を還元に含める
最も多い手口です。
会社は従業員の社保料の約半分を負担しています(厚生年金・健康保険・雇用保険など)。月給40万円なら会社負担分は月6〜7万円前後です。
これを「会社があなたのために払っているお金」として還元率に含めると、数字が一気に8〜10ポイント膨らみます。
正しい計算では、社保の会社負担分は「給与として手取りに入らないコスト」です。
面接時に「社保の会社負担分は含まれますか?」と聞いて「含まれます」という回答が返ってきたら、提示された数字から10〜15%を差し引いた値が実質的な還元率と考えてください。
カラクリ② 交通費・福利厚生費を「還元」に算入する
交通費支給・書籍購入補助・資格取得支援なども「還元した」とみなして計算式に組み込む企業があります。
月2〜3万円のコストを還元に入れると、数字がさらに数ポイント変わります。
月単価80万円に対して交通費2万円を「還元済み」として計算した場合、見かけ上の還元率は2.5ポイント増えます。小さいようですが、数字が積み重なると無視できない差です。
カラクリ③ 単価の「計算ベース」を低めに設定する
エンジニアに案件の単価を教えないSES企業は今も少なくありません(出典: SESは単価を教えてくれない ses-beginner.jp)。
例えばエンド企業が月100万円で発注していても、間に複数社が入って最終的にSES企業が受け取るのが80万円の場合、「単価80万×還元率80%=64万円」という計算になります。
エンジニアには「単価80万で還元率80%」と伝えつつ、エンド発注額100万との差20万円はエンジニアに伝えないまま消えていきます。
実体験:SES会社を変えただけで月収が20万→40万になったカラクリ
私がSES1社目を退職したのは、入社から約1年後です。
研修を終えてSES常駐案件に参画し、その間に資格を約10個取得して社内MVPに近い評価をもらいました。報奨金として20万円もいただきました。
でも月収は20〜25万円から動きませんでした。
「自分が頑張ったから給与が上がる」ではなく、「所属会社が案件からいくら抜くか」で手取りが決まる構造に気づき始めたのがこのころです。
🦈 私の実体験
SES1社目で月収20〜25万円のまま1年以上。資格10個・社内MVP評価・報奨金20万円を得ても給与は変わらなかった。別のSES会社へ転職したら同じような案件ルートで月収40万円になった。変わったのは所属会社だけ——「会社が何%取るか」が手取りを決めると実感した瞬間だった。
2社目に転職したとき、担当営業が最初に見せてくれたのが「うちは単価をこの計算式で渡します」という説明でした。
社保会社負担分を含めず、交通費も別途支給する形の計算式で、数字が正直に見えました。
結果、同じような案件の案件ルートでも手取りがほぼ倍になりました。
所属会社の還元率の計算式こそが、手取りの天井を決める。
あなたのスキルは関係ない——というのが私の実感です。
SES内で手取りを増やすには、この「所属会社の取り分の構造」を変えるしかありません。
それが転職なのか、フリーランス化なのかは人によって違いますが、まず「自分の単価がいくらか」を知ることが出発点になります。
SES手取りシミュレーション(還元率×単価の実額表)
「還元率と単価が変わると手取りがどう変わるか」を表にしました。
社保の会社負担分を含まない、「純粋な額面給与」として計算した場合の月給です。
| 月単価 | 還元率50% | 還元率65% | 還元率75% |
|---|---|---|---|
| 60万円 | 30万円 | 39万円 | 45万円 |
| 80万円 | 40万円 | 52万円 | 60万円 |
| 100万円 | 50万円 | 65万円 | 75万円 |
2026年7月現在の計算例。実際の手取り(税引後)はさらに所得税・住民税・社保本人負担分が差し引かれます。詳しくはFP・税理士にご相談ください。
月単価80万円でも、還元率50%と75%では月給の差が月20万円・年240万円になります。
還元率は「ちょっとした違い」ではありません。年収格差に直結する数字です。
あなたが今SES3年目で「給与が上がらない」と感じているなら、単価ではなく還元率を疑うべきかもしれません。
SES月収が上がらない根本原因についてはSES月収が上がらない理由と対策でも詳しく解説しています。

面接で還元率の実態を見抜く3つの質問
還元率の実態を見抜くには、面接で直接確認するしかありません。
以下の3つの質問を、担当者の反応とセットで評価してください。
質問① 「還元率の計算式に社保の会社負担分は含まれますか?」
最重要の質問です。
「含まれます」という回答が返ってきたら、提示された還元率から10〜15%を差し引いた数字が実質的な額面還元率の目安になります。
この質問を聞いただけで、計算が正直な会社かそうでないか、ある程度わかります。
質問② 「私が参画する案件の単価はいくらで計算していますか?」
単価が開示されるかどうかが、透明性の指標になります。
「エンドの単価は非公開」という回答はよくあります。ただし「弊社に届く単価」は開示できるはずです。
「確認が必要」「守秘義務がある」と答えを避ける場合は、単価を低めに設定してマージンを多く取る可能性があります。
質問③ 「実際に入社した社員の月給の事例を教えてもらえますか?」
還元率の計算式より、実際の給与例のほうが信頼できます。
「単価60万円・還元率70%=月給42万円」という実例を出してもらい、その計算式を確認するとズレが見えてきます。
3つの質問に即答できて、計算式に社保会社負担分を含まないと明言できる会社が「還元率が正直な会社」です。回答に時間がかかる・曖昧な場合は要注意です。
フリーランスとして直接エンド企業と契約する場合は、この「中抜き」の問題が構造ごとなくなります。
SESからフリーランスへの移行タイミングについてはSES→フリーランス独立のベストタイミングで解説しています。
SES商流の多重構造——エンドから届く前に何が起きているか
SES業界では多重下請け構造が常態化しています。
エンドクライアントが月100万円で発注したとしても、元請け・中間会社・SES企業と流れていく間に各社がマージンを取っていきます。
🦈 私の実体験
SES2社目に転職したあと、担当営業が「うちはエンドから直請けしているので中抜きの段数が少ない」と教えてくれた。還元率の数字が同じでも、商流が2段か4段かで手取りに差が出る——分母となる単価が違うからだ。商流の段数も確認すべき質問のひとつだと学んだ。
一般的な商流は次の通りです:
| 商流段数 | 例 | エンジニアに届く単価(目安) |
|---|---|---|
| 1段(直接契約・フリーランス) | エンド企業 → エンジニア直接 | 100万円の案件で90〜95万円相当 |
| 2段(プライム案件SES) | エンド → SES企業 → エンジニア | 100万→80万→エンジニアへ |
| 3段(二次請け) | エンド → 元請け → SES → エンジニア | 100万→80万→65万→エンジニアへ |
| 4段以上(三次以下) | さらに間が増える | 100万が50万以下になることも |
単価60万円と聞いても、それが直請けの60万円なのか、100万円から4段で中抜きされた60万円なのかで意味がまったく違います。
SES対フリーランスの手取り比較についてはSES vs フリーランス手取り比較——中抜きの実数値でさらに詳しく検証しています。
フリーランス新法(2024年11月施行)がSES還元率に与える変化
2024年11月、「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」が施行されました。
業務委託や派遣の取引慣行を適正化することを目的とした法律で、SES業界にも影響があります。
主な変更点(2026年7月現在):
– 発注事業者は業務委託条件を書面または電磁的方法で明示する義務が生じた
– 報酬の不当な減額・支払い遅延への対処基準が明確化された
– フリーランスが不当な取引慣行を申告できる窓口が整備された
フリーランス新法により「単価の書面明示」が求められるようになり、SES企業が単価を隠しにくくなる流れが生まれています。2026年以降、単価開示を求める際の交渉根拠として活用できます。
ただし法改正の存在を知らないまま契約してしまうと、不利な条件に気づけないリスクが残ります。
「還元率と計算式の書面明示」を要求することは、法的にも合理的な行動になりました。
本項の情報は2026年7月現在のものです。制度の詳細・最新情報は厚生労働省フリーランス新法特設ページでご確認ください。法律の解釈・適用については弁護士・社会保険労務士にご相談ください。
よくある質問
Q. SES還元率の平均はどのくらいですか?
A. 業界平均は50〜65%程度です。厚生労働省「令和5年度労働者派遣事業報告書」のデータをもとにした試算では、ITエンジニア向けの還元率は約61%です。「高還元SES」を謳う企業は70%以上を提示しますが、計算式に社保会社負担分や福利厚生費を含めているケースが多く、実質的な額面還元率は65%前後になることが多いです。
Q. 還元率80%はウソですか?
A. 必ずしもウソではありませんが、「何を含めて計算しているか」によって意味が大きく変わります。社保の会社負担分(月5〜8万円)を含める計算式の場合、実質的な額面還元率は65〜70%程度になります。還元率80%が持続可能な会社経営の限界ラインは72〜73%と言われており、それを大幅に超える数字は計算式の工夫が入っていると考えるのが自然です。
Q. SES単価を教えてもらえない場合、どうすれば良いですか?
A. 「フリーランス新法(2024年11月施行)により、業務委託条件の書面明示が義務化されました。単価の開示をお願いできますか?」と伝えることで、法的な根拠をもとに確認できます。それでも開示しない会社は透明性に問題がある可能性が高く、転職先として慎重に検討するべきです。
Q. SES会社を変えるだけで本当に給与が上がりますか?
A. 上がる可能性は十分あります。私自身、転職のみで月収20〜25万円から40万円になりました。同じ案件ルート・同じスキルでも、所属するSES会社の還元率と計算式の差が手取りに直結します。ただし会社によって案件の質・保障・福利厚生も異なるため、還元率だけで選ばないことも大切です。
Q. フリーランスになるとSES還元率の問題は解決しますか?
A. 直接エンド企業と業務委託契約を結ぶフリーランス(フリーランスエンジニア)になれば、「所属会社の取り分」という概念がなくなります。ただし社会保険・確定申告・案件獲得はすべて自己管理になります。独立のメリット・デメリットと移行タイミングはSES→フリーランス独立のベストタイミングで解説しています。
Q. 高還元SESと普通のSES、結局どちらが得ですか?
A. 「高還元」の計算式が正直かどうかを確認した上で、純粋な給与額が高い方が手取り面では有利です。ただし案件の質・スキルアップ機会・福利厚生・安定性も比較してください。高還元を謳いつつ案件の質が低い会社では、長期的なキャリアと単価水準が下がるリスクがあります。
📝 この記事のまとめ
- SES還元率の相場は50〜65%。「80%」を謳う会社は社保会社負担分や経費を含めた計算式を使っていることが多い
- 見抜き質問は3つ:①社保会社負担分の有無 ②単価の計算ベース ③実際の給与事例を確認する
- 商流の段数も重要。3段以上になると単価の30〜40%が中抜きされ、エンジニアに届く単価が大きく減る
- フリーランス新法(2024年11月施行)で単価の書面明示が義務化。確認を求める法的根拠が生まれた
- 同じスキルでも所属会社の還元率次第で年収が100万円以上変わる。転職先・独立を検討するなら案件の単価を知ることが最初の一歩
👉 まずやること:今の自分の単価がいくらか、エージェントに登録して確認してみる
まず自分の市場価値を知ることが、手取りを上げる最初の一歩です。
エージェントに登録するだけで、今の自分のスキルがどの単価帯で評価されているかがわかります。登録は無料で、相談だけでも構いません。
著者プロフィール
🦈 さめじま(フリーランス・ラボ・アーキテクト 編集長)
完全未経験からエンジニアとして独立し、数年で年収1,000万円・個人資産5,000万円を達成した戦略家。感情や根性論を排除し、AIツールと税務戦略を駆使した「最もスマートな独立ルート」をシステム論として発信している。フリーランス・ラボ・アーキテクト(本メディア)では、独立・副業・資産形成・FIREをテーマに、再現性の高い実体験ベースの情報を提供している。
本記事の内容は2026年7月現在の情報をもとに作成しています。フリーランス新法・労働者派遣法は改正される場合があるため、最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認ください。本記事は特定の転職・独立行動を推奨するものではありません。キャリアの判断はご自身の状況をもとに行い、必要に応じて専門家(社会保険労務士・弁護士等)にご相談ください。
